目次と今季の作品


2021年秋季号 NO.265
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC〉
口語短歌の添削の難しさ 堀江良子
〈30首詠〉  小原起久子
〈15首詠〉  元井弘幸・赤石美穂・堀江良子
山下和夫の歌 1981年『埴』11月号より 
〈作品Ⅰ㋑〉 宮澤 燁・森たま江・
       牧口靜江・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・茂木タケ
       石井恵美子・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 﨑田ユミ・佐藤香林
       佐藤真理子・ほか
山下和夫の歌68    小原起久子
歌集『耳』(1995年第5歌集)
鮎の瀬(その3)
〈まほろば集〉 菊池悦子・坪井 功
一首鑑賞 天田勝元・萩原教子
〈作品Ⅱ〉今井洋一・大川紀美枝・
     小曾根昌子・ほか
〈会友〉 井出尭之・川西富佐子・
     髙橋眞砂江・ほか
短歌の作り方覚書 
 暗黙の中に意思を表す 堀江良子
ONE MORE ROOM 小原起久子
 山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より
 28【転体における一語の効用】
特集 生活詠について
  生活詠にみる時代   森 たま江
  漣を         藤巻みや子
歌会点描(8)      相良 峻
〈題詠〉紅葉 
江原幸子・佐藤真理子・
佐藤和子・ほか
ESSAY   
 カラスウリ   石井恵美子 
 認知症対策   今井洋一
玉葉和歌集(抄)14  時緒翔子
『炎の女たち』古代編(38) 山下和夫著
秋季号作品評
 作品Ⅰ評     相良 峻
 15首詠・月集評 江原幸子
 作品Ⅱ・題詠評 宮崎 弘
ばうんど
編集後記
表紙絵 若山節子

会員作品(抄) 
 ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【30首詠】
ウィズコロナに原子炉背負いいる誰も誰も
吹き出る汗を拭えず   小原起久子
【15首詠】
仏壇を買いに行きしまま戻らざりし兄骸となりて
父に寄り添う      元井弘幸
春山の七日の旅に送り出し帰り待ちいる
空蝉の洞        赤石美穂
過ぎゆきに見失いたるくれないか心透くまでの
秋のもみじ葉      堀江良子
山下和夫の歌 1981年『埴』11月号より
この市(まち)に人焼く窯の三(み)つありて
いずれの橋もその丘に伸ぶ  山下和夫
まっすぐに街を見おろす男(お)の鼻梁なべて
彼岸にあるはその的       同
風の芯ふいにわかれて四散する夕べむらさきの
昏れ水の上           同
【作品Ⅰ㋑】
亡き人の時計の針が巣ごもりの春の時間を
まわしています      宮澤 燁
シビビィを鳴らして遊んだ野の道にマスクの老いが
思い出を摘む       森 たま江
逆光に背を向けて佇つ 是のの世にわが残像を
残しおくため       牧口静江
にんげんはあやまち冒す繰り返す闇の深みの
コロナ禍の波       宮崎 弘
ベランダの屋根打つ雨音虚ろなる吾が胸裡に
音なく溜まる       江原幸子
自粛時の愚痴は生ゴミと聞きしよりゴミ出す朝を
ゆったり歩く       佐藤和子
散り急ぐ桜花びら歩道に満ちて 私はひとり
三密避ける        青木晶子
【作品Ⅰ㋺】
露草の透けたる青のやさしくてしののめ
心裏(しんり)の荒野(あれの)見つむる 
             相良 峻
病める息子(こ)の枕辺かすか花匂い白梅ろうばい
此処だけは春       茂木タケ
早春の風はうすき刃白鷺も直ぐなる音を
羽毛に包みぬ       石井恵美子
せわしなく働く職員 市役所は現代(いま)を生きゆく
人らに満てり       石川ひろ
あさなさな白きを広げる梅の花 見出しのコロナ
数詞ましゆく       西村英子
大判の印刷物を切り揃へ綴じた教科書
 敗戦の春        板垣志津子
【作品Ⅰ㋩】
ゆったりと流れる水面に尾鰭のみ突き出し泳ぐ
鯉の大晦日        﨑田ユミ
卯の花の白くそよげる向かひ家の主の逝きて
人住み変はる       佐藤香林 
夜半の地震(ない)は大震災の余震とぞこの十年に
幾人見送りしか      佐藤真理子  
検温と手洗いの表示鮮やかに路肩に立てり
もう何か月        清水静子  
高層のビルの谷間に人の輪が憂いを忘れる
ピエロの芸に       反町光子 
点検を終えて説明鮮やかに瞳輝く
女性整備士        萩原教子 
疵持つ手かたく握りて目覚めたり泣きて
産まれし日の形なる    藤巻みや子 
息すると意識に現わる生の証のSINѲの
グラフの波形       茂木惠二 
ピアニスト真似てひよいひよい肩揺らせ弾きゐし孫よ
今女子高生        天田勝元 
園児等の皆帰りたる園庭に桜の花びら
風と遊べる        伊藤由美子 
縁側に布団を干せば五歳児のおそそで描いた
クワガタ逃げる      今井五郎 
色褪せし鉄棒握る古社さか上がりする
児の目にさくら      小澤嘉子 
ははそばの母の愛思うわが母の八人の子への愛の
不思議思う        大場ヤス子
【まほろば集】10首
道の端に立つ楠の風香り包まれしわれ
いつしか学童       菊池悦子 
特養のテレビ電話の弟は懸命に
手を振り続けたり     坪井功
【作品Ⅱ】
福豆はあちらこちらに飛び散りぬ君の言い分
我の言い分        今井洋一 
清清しき白き山茶花コロナ禍を小春日和の
一日は暮れて       大川紀美枝 
受話器持つ手に力入れ耳にあて目閉じて応え
わが老いを知る      小曾根昌子 
【会友】
新しい年早々とオリガミ付きのスマホ決済を
勧めるセールス      井出尭之 
夕陽(せきよう)に光る多々良沼(たたら)に
白鳥の北へ帰らん羽音響けり 川西富佐子 
初雪草は真夏の緑の葉の上に初雪の積もるが如く
咲きいる          髙橋眞砂江 
大輪の蘂を開かす珍椿(ちんつばき)辞書調べても
名前わからず        土屋明美 
根元よりゆるりと効きし生ごみに乙女椿は
大木となる         中山幸枝 
なにもかも知らせず母となりし娘(こ)は今なごやかに
お産を語る         牧野八重子 
郵便受け開ければ束になりし文 うからの生が
煌めいている        みたけもも

【題詠】紅葉  3首
青々と繁りいし葉が赤や黄に色を変えゆく
 ふとわびしい       江原幸子  
「紅葉(もみ)つ・紅葉つ」と唱えれば思い出す母の紅絹
頬にやわらかかりし     佐藤真理子 
吾(あ)と撮りし最後の写真亡き父は紅葉(もみじ)
の世界になお生きている   佐藤和子 
遠足を終えて一口茶をすする ゆったり紅葉を
眺めもせずに        清水静子 
芽生えいるなごみのもみじに降りそそぐ朝の光は
妖精となり         﨑田ユミ 
八ヶ岳の紅葉のぼる小海線のひとりの座席
 ふるさとへの旅      大場ヤス子 
尾瀬へ行つて来たと紅き葉一枚入つた手紙が
形見となりぬ        板垣志津子 
紅葉の深き渓に一世を終える岩魚よ満ち足りた
死を死ぬるか        元井弘幸