目次と今季の作品


2021年夏季号 NO.264
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC〉
父語らず   元井弘幸
〈30首詠〉  堀江良子
〈15首詠〉  宮崎弘・矢島由美子・宮澤 燁
山下和夫の歌 1981年『埴』より 
〈作品Ⅰ㋑〉 小原起久子・森たま江・
       牧口靜江・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 元井弘幸・相良 峻・
       茂木タケ・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 天田勝元・伊藤由美子・
       今井五郎・ほか
山下和夫の歌67    小原起久子
歌集『耳』(1995年第5歌集)
鮎の瀬(その2)
〈まほろば集〉 小澤嘉子・茂木惠二
ONE MORE ROOM 小原起久子
追悼 関根さつきさん
一首鑑賞 藤巻みや子・相良 峻
〈作品Ⅱ〉石田春子・今井洋一・
     小曾根昌子・ほか
〈会友〉 井出尭之・川西富佐子・
     髙橋眞砂江・ほか
特集 写実・写生の歌について
  写意と写生     相良 峻
  よく見るという基本 元井弘幸
  「写生・写生の歌」について
            大場ヤス子
短歌の作り方覚書 助詞・助動詞の必要性 堀江良子
〈題詠〉夕映え 石井恵美子・板垣志津子・
        大川紀美枝・ほか
歌会点描(7) 相良 峻        
ESSAY     たんか・はいくを友として
            佐藤香林
玉葉和歌集(抄)13 時緒翔子
『炎の女たち』古代編(37) 山下和夫著
秋季号作品評
 作品Ⅰ評     森たま江
 15首詠・月集評 佐藤和子
 作品Ⅱ・題詠評  天田勝元
ばうんど
ESSAY 下宿生活 茂木惠二
編集後記
表紙絵 若山節子

会員作品(抄) 
 ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【30首詠】
浅川の春水にゆれる小石らの呟くさまを佇みて
視る 堀江良子
【15首詠】
わが住むは町の端っこ一丁目いちにいにいさん
自転車を漕ぐ 宮崎 弘
寒空にほほほ・ほほほと春を呼びしだれしだれて
咲く梅の花  矢島由美子
明るすぎて見えない花火の暗さなどあなたと
語る 八月六日 宮澤 燁
1981年『埴』9月号より
われをつと嗅ぎたるのみに振りむかず行きたる
若き一頭の犬   山下和夫
海恋し山恋しついに人恋し真白きノートに
向かいておれば    同
【作品Ⅰ㋑】
温む水に婚姻色のハヨの群 バカッパヨなどと
呼ばれたりして        小原起久子
光らざるひかりともして鎮もれる魔法瓶の中のあらたまの水
               宮澤 燁
傷つける言葉も増えてそれぞれの痛みも増えた母と娘の秋
               牧口靜江
新型のコロナが揚げる狼煙かも夏の地平に赤い満月
               宮崎 弘
冬の精霊刺激したのかわが妬心 満開の桜隠して雪ふりつもる
               堀江良子
フラ踊る裸足の足裏に踏む土の柔く温ときわたくしの午後
               江原幸子
死にたいは生きたいということ 京都市の嘱託殺人の報におののく
               青木晶子
`深海の花`とう名のつくマスクつけコロナ禍の街へ買い物に行く
               石川ひろ
【作品Ⅰ㋺】
あごに髭蓄え毎朝整えて マスクのなかに自己主張とどまる
               元井弘幸
濡れそぼちてるてる坊主がうな垂れるコロナの恐怖に濡れそぼつ身も
               相良 峻
川の木にさつと止まりしかかわせみの背なより
輝く脚みかん色        茂木タケ
リモートの面会五分フレームに小さくなりたる
義母がゐるなり        石井恵美子
そらにみつ大和の国の青空と花水木の実と
ソフトクリーム        赤石美穂
手作りのハンカチマスク心地良し手おんぶの
母の背のあたたかき      西村英子
平成の大合併に町名は由緒も歴史も何処に行きし
               板垣志津子
【作品Ⅰ㋩】
コロナ禍の画像崩して遠雷が汗ばむ肌に涼を届ける
                茂木惠二
御代代わり令和になりて初めての正月迎ふる晴れたる朝
                天田勝元
眉毛がキリッと上って居た男 叱責する厳しい声の
                伊藤由美子
母よりもらい幼が小さく千切りては投げ込むパンに鯉のひしめく
                今井五郎
蝉声はフェルマータのごとこの夏は立ち話なき
ごみ収集所           小澤嘉子
ひまわりは日に向き咲くと冬の花風に向き咲く冬のひまわり
                大場ヤス子
遠き日の海辺の思い出運ぶ風キラキラカラン
貝殻風鈴             菊池悦子
桜花ゆらし啄みいる目白サーカス観るごと
あかず見上げる          﨑田ユミ
ゐのこづち実になりてなほ打ち震へわが裾(すそ)にすがる愛欲るごとく
                 佐藤香林
墓地に立てば八つのわれが薬缶持ち桑畑の細き道ぬってくる
                 佐藤真理子
苗ゆらぐ田を低く飛ぶ糸とんぼ水面に写す青のきらめき
                 反町光子
小高きふれあいの森で園児らの歓声を聞き鰍韆を漕ぐ
                 坪井 功
ほとばしる母乳の色にひいらぎは莟もちたり冬の華なる
                 藤巻みや子
【第21回プログレス賞受賞作品】
   コロナの秋  板垣志津子  全30首
           宮澤 燁選評分7首
静寂と暗雲こもり街ねむる ああ天牢受売よ出でよ
                  板垣志津子
満員の岩戸横目にゆっくりと雉鳩一羽横切るまひる
                    同
物資不足の頃の赤紙色淡く人の命は集められたり
                    同
十二単衣の少女はひとり誰を待つ紫式部を照らす明月
                    同
二十年のちの小さな書道塾 生徒六人実家の廊下
                    同
「大切な人だから」とて手もふれず逝きたる人の夢をまた見る
                    同
ハイネ詩集を読みし十五の春の日よ五月の空は高すぎました
                    同
【まほろば集】10首
洗たく物と共に写れる昭和の花嫁二十歳の叔母のふくよかな頬
                    萩原教子
ダム底の母の生家の脇にある川のせせらぎ我も聞きたし
                    清水静子
【作品Ⅱ】
忍冬の甘い香を一連の風が運びて庭を満たせる
                    石田春子
特養に入れたる母が笑み浮かべ手を振り続ける別れ間際に
                    今井洋一
補聴器にメガネにマスク加わりぬコロナ禍つづき耳は痛いよ
                    大川紀美枝
一瞬の啼く音降り来し空仰ぐ仰げど見えぬ蝉の初鳴き
                    小曾根昌子
【会友】
レンタルの和装華やぎ参道ではしゃぐ正月外国の人
                    井出尭之
リウマチを患う義姉(あね)が収穫し届けし新ジャガふわりと甘し
                    川西富佐子
山裾の夕べの霧がふれてゆく秋しろがねの蕎麦うつ(匠(たくみ))
                    関根さつき
小春日に自転車に行くいなか道東海桜のそそと咲きおり
                    髙橋眞砂江
杉玉を門にかかげる蔵元の聞けば牧水一献と言ふ
                    土屋明美
コオロギの大合唱に迎えられ宵の口の寝室に入る
                    中山幸枝
人参もほうれん草も玉ねぎもおいしかったよ ぜーんぶ 父さん
                    牧野八重子
【題詠】木・樹 3首
荒海に向かい燐寸に煙草を点けし日にはこの国を憂う言葉もありしが
                    元井弘幸
木の葉の舞い散るごとく風の中 日々の欠片がこぼれやまざり
                    石川ひろ
生い茂るゆりの木見上げさがしみる花はいずこに こぞの夏にも
                    﨑田ユミ
東京に秋見つけたりビル群の谷間に金毘羅神社の紅葉
                    川西富佐子
夏庭の木陰のひと息アボカドは天まで伸びる太陽おおう
                    大場ヤス子