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2023年春季号 NO.271
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC
  平和ってなんだろう 宮澤 燁
〈15首詠〉 今井五郎・矢島由美子
山下和夫の歌 1983年『埴』3月号より 
〈作品Ⅰ㋑〉 小原起久子・宮澤 燁・
       森 たま江・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・石井恵美子・
       赤石美穂・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 佐藤香林・﨑田ユミ
       清水静子・ほか
山下和夫の歌74   小原起久子 
 歌集『耳』(1995年第5歌集)   
 撫子
〈まほろば集〉 小曾根昌子・菊池悦子
〈作品Ⅱ〉今井洋一・大川紀美枝・ほか
〈会友〉 井出尭之・川西富佐子・
     土屋明美・ほか
一首鑑賞 佐藤香林・藤巻みや子
第23回プログレス賞受賞作品
 『遠き夕空』 佐藤真理子 
同作品評 堀江良子 
同作品評 今井五郎
ONE MORE ROOM 小原起久子
  山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より  
  【時間を詠う】
〈題詠〉風
  牧口靜江・赤石美穂・西村英子・
  板垣志津子・みたけもも・大場ヤス子
短歌の作り方覚書  19
 「か」と「や」について 堀江良子
歌会点描(14)      相良 峻
〈30首詠〉大場ヤス子
ESSAY 
 脊柱管狭窄症になって 今井洋一
一首鑑賞 小原起久子・板垣志津子
玉葉和歌集(抄)20     時緒翔子
『炎の女たち』古代篇(44) 山下和夫著
秋季号作品評 
 作品Ⅰ評        森たま江
 15首詠・まほろば集評  宮崎 弘 
 作品Ⅱ・題詠評      江原幸子
お手元に届かなかった手紙 藤本朋世
ばうんど
新刊紹介
編集後記
表紙絵 山下和夫

会員作品(抄)
 ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【15首詠】
フジバカマに止まりひたすら蜜を吸うアサギマダラに
呼吸を合わす   今井五郎 
この地球(テラ)の自転に乗り我も木も影を引きつれ
未来を目ざす   矢島由美子
山下和夫の歌 1983年『埴』3月号30首詠より
胸凛々輝り冬原に草食まず立つ
走馬一頭     山下和夫
見下(みくだ)せばたちあがりくる一すじの滝
滝壺の黒き中より  同
【作品Ⅰ㋑】
若き雲雀の鳴き鳴き昇る苦しみを包み隠せる
春の曇天     小原起久子
廊下の奥に立っていた戦争が茶の間の真中に
立っている    宮澤 燁
吾亦紅は小さき紅をかかげおり目立たぬ我の
生にも似て    森たま江 
毎日の安否確認来るスマホ彼の世に忘れず
持ってゆかねば  牧口靜江
打ち上げを無事成し終えて花火師の台風それた
それからの夜   宮崎 弘
鬼の伝説罷い通る村里の冬桜の花
枯れるを知らず  堀江良子
越し方を振り返りみれば幼子が時に泣き笑いて
吾の後を追う   江原幸子
猛暑行きたる夫の通院介護入り口前に
へなへなよろける 佐藤和子
雪柳・桜・れんぎょう・山つつじ 桃源郷なる
われの故郷    石川ひろ
妻、母、叔父、叔母ことごとく老いた 古寺の石段
見知らぬ踏み跡  元井弘幸
妖精のごとき真白き花かかげ茗荷は樹下の
草陰照らす    青木晶子
【作品Ⅰ㋺】
水の面(も)のうろこ雲へと紅葉のひとひらそろり
到達しにけり   相良 峻
体から夏の疲れを剝ぐやうに血筋のしがらみ
捨てに行きたい  石井恵美子
枯れ芝色の雨蛙春の陽を充電するごと
のった      赤石美穂
コンコースにおにぎり食べつつ聞き入りぬ何十年ぶりの
「乙女の祈り」    板垣志津子
タタタタタ護岸工事のキャタピラ音画面の戦車に
重なりてゆく   佐藤真理子
【作品Ⅰ㋩】
朝顔の初の一輪のど白く赤むらさきに
窓辺を覗く    佐藤香林
花嫁となりたる孫と腕組めば八十路の婆は
花嫁気分     﨑田ユミ
障子して雨音を消す秋の日はアンパン食みて
われ甘やかす   清水静子
水色のあじさいと黄のチューリップ背にして
女王エリザベスが立つ 反町光子
終活を仕上げせねばとあちこちを取り替えんとし
深く黙(もだ)する  坪井 功
晴れ渡る青空のようなショウヘイの笑顔があれば
ビールはいらぬ    萩原教子
戦争を報じるテレビを止めて立ちむらさきに咲く
球根植えゆく     藤巻みや子
朝露に濡れてしっとり額あじさいの青がくっきり
風にふれおり     茂木惠二
樫の木は菓子がなるのと訊きし子が三十路となりて
子の親になる     天田勝元
席替えで初めて離れた場所となる君の声聞くも
背中越しなり     伊藤由美子
【まほろば集】10首
音しぼり聞けるラジオの闇を押し流れ来るなり
「ボルガの舟歌」   小曾根昌子
一度しか言葉交わさず逝きしひと挽歌の中より
顕ちくる笑顔     菊池悦子
【作品Ⅱ】
鷲掴みの塩投げ上げてポンポンと勝つぞ勝つぞと
廻しに響かす     今井洋一
吾が齢父母の享年すでに超え生の汀に
暮れ残る赤      大川紀美枝
【会友】
日にちに開ける雨戸もそのままについ眠りけむ
春は近づく      井出尭之
大谷翔平阿修羅に見えて投走打三面六臂
われを魅了す     川西富佐子
うぐいすの梅か聞こゆる鳴き声にけふの散歩は
春を感じる      土屋明
公園の垣根の前方に山々そびえ
晴れ晴れと元旦    中山幸枝
ゆっくりとソロのパートははじまりぬ五十路のタカシ
ひと月後に逝く    牧野八重子 
アスファルトしっかり踏みて走りゆく若者の姿
なぜかせつない    みたけもも

第23回プログレス賞受賞作品
遠き夕空 佐藤真理子 全30首
 別ページ「プログレス賞」にて 全首掲載

【題詠】風 3首
晩秋の風飲み込みて柘榴の実われの手届かぬ
高さに実る     牧口靜江
シャンプーの髪をさらさら乾かして一夏逝くなり
扇風機が      赤石美穂
ランナーがゆれる柳の間を走る風の流れに
逆らいながら    西村英子
大き星ふたつと皆既月食が 風やみし
空に競演      板垣志津子
荒れし世の冷たき風の吹きすぎて咲き出でし花も
色を失せたり    みたけもも
風邪ひけばチンコロという真綿をば首に巻き
咳しずめたり母の真綿 大場ヤス子
30首詠 
アメリカのロサンゼルスの地図にみる極東に位置する
小さし日本     大場ヤス子