2023年冬季号 最新 目次と会員作品

2023年冬季号 NO.273
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC
  団塊世代からZ世代へ 相良 峻
〈15首詠〉    元井弘幸・石川ひろ
〈山下和夫の歌〉 1984年『埴』1月号より 
〈作品Ⅰ㋑〉 小原起久子・宮澤 燁
       森 たま江・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・石井恵美子・
       赤石美穂・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 天田勝元・伊藤由美子・
       菊地悦子・ほか
一首鑑賞   矢島由美子・板垣志津子
ONE MORE ROOM 小原起久子
   山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より
    37【硬質な男歌】
〈まほろば集〉清水静子・佐藤香林
〈作品Ⅱ〉  今井洋一・小曾根昌子・
       大川紀美枝
〈会友〉   井出尭之・板垣志津子・
       ほか
短歌の作り方覚書  22
       数詞について 堀江良子
〈題詠〉 動物
       板垣志津子・菊池悦子・﨑田ユミ
       佐藤真理子・清水静子・大場ヤス子
玉葉和歌集(抄)23      時緒翔子
『炎の女たち』古代篇(47) 山下和夫著
ESSAY いつの戦前 小原起久子
    避難勧告  宮崎 弘
春季号作品評 
 作品Ⅰ評         堀江良子
 15首詠・まほろば集評  石井恵美子 
 作品Ⅱ・題詠評      萩原教子
ばうんど
編集後記
表紙絵 山下和夫


会員作品(抄)
 ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【15首詠】
常念岳見上げるベンチの山葵ソフトに
鼻詰まらせたる老いひとり 元井弘幸
水車小屋の水車永遠に回りおれ わさび田の川に
戦争近づくとも      同
三日間の生まれる苦しみ乗り越えて赤子は未来へ
雄叫びあげる       石川ひろ
放射線にのびゆく雲は天空の扇となりて
われを包まん       同
【山下和夫の歌】 1984年『埴』1月号 より
継ぎしまま創らず継がす一生ともかの語部の
一人の阿礼(あれ)も   山下和夫
雨樋の朽葉払いきてねころべばわが体内の血も
すなおに流るる      同
【作品Ⅰ㋑】
今年の巷は赤か白かと揺れながら箐火花が
軽トラで来る     小原起久子
冬の砂丘の風を自在に転がしつつ落ちてゆきます
孫のベレー帽     宮澤 燁
半夏生(はんげしょう)の葉の白白と揺れあいて
庭を埋めおり夫逝きし夏 森たま江 
額縁に収まりきらぬ絵のような過去のみわれの
記憶に残る      牧口靜江
その声は小鳥にあらず蛙なり雄叫びの刃
あさを切り裂く    宮崎 弘
魂も臓器と思う取り去れば人工魂
入れねばならぬ    堀江良子
傘立ての傘がカラカラ陽を浴びる用なきものの
気軽さに佇つ     江原幸子
癒される初繭掻きするカレンダーの皇后陛下の
やさしい手もとに   佐藤和子
【作品Ⅰ㋺】
ついに来たコロナ感染 灼熱の頭に死後の
あまた渦巻く     相良 峻
タンポポの綿毛のやうに頼りない父の髪の毛
そつと語りやる    石井恵美子
高齢運転認知度検査 苦笑しつつ脳葉に
日時を刻む      赤石美穂
ご飯粒こぼして妻にしかられる幼い粗相を
重ね老いゆく     今井五郎
防犯カメラの取り付け終わり代わる代わる撮られに
出てゆく冬の夜    佐藤真理子
【作品Ⅰ㋩】
世にあらば大学生と思ひては写真見返す
初めての孫      天田勝元
初夏の陽を受けて育ちたるびわの実を百才の
みやさんがツヤツヤと画く 伊藤由美子
ゆったりと湯舟に浸かり「ありがとう」あなたの
くり返し言いし言霊  﨑田ユミ
母在れば芽吹きを摘まむ蕗の薹呆けて立てり
雑草の中       菊池悦子
認知症進むもスマホデビューしたKさんLINEを
にぎやかにする    反町光子
外孫にオセロ挑まれ老二人は月に幾回も
練習をする      坪井 功
今鳴いた鳥の名教えてくれたろう 一人眺める
早朝の庭       萩原教子
猫といる人の羨しも草陰に呼べば
返事をした猫いない  藤巻みや子
山の背に襲いかかりし雲の群れ風に裂かれて
崩れゆきたり     茂木惠二
この庭は東南の角市道だがセットバックして
花壇をつくる     大場ヤス子
【まほろば集】10首
はみ出した垣根の枝葉増しゆきて内なる家に
ひとり埋もれり    清水静子・
猫逝きて猫じゃらしの草殖えにけり 忘却を厭(いと)う
猫を思ひて      佐藤香林    
【作品Ⅱ】
待つ人の笑顔どんどん浮かびきて
次々と掘る雨後の筍  今井洋一
マスクする習いに慣れず今日もまた携帯せず出て
無言の老生      小曾根昌子
髪の毛の伸びたる時間(とき)を切り詰めて桜花散る
蕊を残して      大川紀美枝
【会友】
幼より胃腸が弱く医師めざし常にマスクの
師は逝く 百歳    井出尭之
渡去前の食事かツグミの一群は無人の公園を
占領している     板垣志津子
今年また逢いたくなりて植えてみる薄紅(うすくれない)の
コットンの花     川西富佐子
散歩道に春の日ざしが満ちていてタンポポの黄が
そこここに輝る    髙橋眞砂江
風鈴を強く鳴らして吹く台風騒音にして最後のあがき
           土屋明美
太陽は庭の大根葉に白い花つけてぐんぐん
背を伸ばしてゆく   中山幸枝
ひっそりと一人靜かはひらきたり垣根の下はしばし華やぐ
           西村英子
彼からの手紙を運ぶバイク音遠きに聞き分かる吾が熱き耳
           牧野八重子 
【題詠】動物 3首
往診の医師は自ら馬を御しパッカパッカとクランケに向かふ
(昭和初期)     板垣志津子 
留守番の「ラッキー」はいつも玄関に突進してきた
長い舌出し      菊池悦子 
「ヤギの乳絞るは朝のわが仕事」過ぎ去りし日の
ふるさとの景     﨑田ユミ 
十余年住み手無き実家(さと)は檻と化す窓から鼬が
部屋の我見る     佐藤真理子 
透明な卵を見ればメダカにもいろんな恋のあるか
聞きたし       清水静子 
鳥・鳶は眼がきくという手をふれば羽をゆらせり
天空は涼しいと    大場ヤス子