2024年春季号 NO.275
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC
言葉の発見 堀江良子
〈30首詠〉 小原起久子
〈山下和夫の歌〉 1995年『埴』10月号より
〈15首詠〉 菊池悦子・藤巻みや子・堀江良子
〈作品Ⅰ㋑〉 宮澤 燁・森 たま江
牧口靜江・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・石井恵美子
赤石美穂・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 天田勝元・﨑田ユミ
伊藤由美子・ほか
〈作品Ⅱ〉 小曾根昌子
ONE MORE ROOM 小原起久子
山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より
39【「場」の倒錯・「時」の倒錯】
〈まほろば集〉 反町光子・坪井 功
一首鑑賞 矢島由美子・佐藤香林
〈会友〉井出尭之・大川紀美枝
板垣志津子・ほか
〈題詠〉食品
板垣志津子・大場ヤス子・﨑田ユミ
佐藤真理子・萩原教子・茂木惠二
元井弘幸
玉葉和歌集(抄)25 時緒翔子
短歌の作り方覚書 24
要点となる語の反復 堀江良子
ESSAY 振り返ってみれば 清水静子
『炎の女たち』古代篇(49) 山下和夫著
冬季号作品評
作品Ⅰ評 石川ひろ
15首詠・まほろば集評 宮崎 弘
作品Ⅱ・題詠評 佐藤和子
2023年秋季号30首「秋の記憶」評 藤本朋世
ばうんど
編集後記
表紙絵 山下和夫
会員作品(抄)
ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【30首詠】
激動の大地の果てまで続く空遣(や)る方無しの
八月の空 小原起久子
争うことを忘れて永きわが街のときに流れの
濁ることあり 同
【山下和夫の歌】 1995年『埴』10月号 より
崩れたる鹿の頭骨を囲みたる生死のそとの
かたくりの紅 山下和夫
しぐれ来てまたしぐれ来る頭の上に滑翔の鳶の
皓皓の眼(まみ) 同
【15首詠】
粉薬オブラートに包む細き指従妹を美しと
十歳のわれ 菊池悦子
従兄の弾く「アルハンブラの思い出」は従妹と聞きし
未知の切なさ 同
鉛筆を握るといつも温かい樹であった時の
木の体温 藤巻みや子
泣いてない滲んでるだけ遠い木に小鳥も目覚め
陽もあたるから 同
灼熱の昭和の香る商店街は耳鳴りの
するような静寂 堀江良子
青嵐に繁みの魔物の影ゆらぐ 明日は無きもの
無意味にさがす 同
【作品Ⅰ㋑
勝利とう言葉が人を虜にす大谷翔平 東条英機
宮澤 燁
一月の道を枯れ葉はさまよえり役目の終わりし
われのごとくに 森たま江
右向けば左のことは忘れます 鈍感力は
ますます冴えて 牧口靜江
なにするも気のそぞろなり春真中ぬき取った歯が
疼きだす 江原幸子
葉の落ちて夕日に赤い鳥爪古刹の梵鐘
力まずに衝く 宮崎 弘
中秋の名月の朝ふいに鳴る電話が知らせり
いとこの訃報 佐藤和子
朱夏の窓より射し込む陽光は一本の矢となり
わが部屋を射る 石川ひろ
団らんの消えるものと知らずいし幼きわれ居し
居間重機がたたく 元井弘幸
【作品Ⅰ㋺】
火のごとく泣きいる赤子の天真さ ぎらつく陽射差しも
天真爛漫 相良 峻
じゃがいもの芽を剥ぐ指先うすく切る 老人ホームを
どう切り出すか 石井恵美子
芽吹くべき数多の団栗踏みしだく母木の下の
幾人(いくたり)の足 赤石美穂
起き抜けにコップ一杯の水を飲むコロナ熱に乾く
喉を逆立て 今井五郎
夏休みの子らの声吸いミュージアムの月長石は
静かに輝く 佐藤真理子
【作品Ⅰ㋩
右の手に手提げ下げたる龍の人形話しかければ
返事をしそう 天田勝元
飾られし「光に映える明神池」光と共に
向かいくる波動 﨑田ユミ
誕生日のお花は万年青(おもと)
花言葉は長寿と母性 初めて知りぬ
伊藤由美子
無言館訪ねし日ありて若き日の絵のモデルたちの
歳月長く 大場ヤス子
屋敷祭の近づく中を篠に紙垂(しで)挟みて
捧ぐ神と屋内(やぬち)に 佐藤香林
駐車場はいつのまにやら新築の家に化けおり
新町駅前 清水静子
窓からのあふれる光に安堵する娘の新居を
初めて訪ね 萩原教子
灯を求め居間に張りつきし守宮(やもり)の
手足動かざりけり 茂木惠二
リンゴの皮を剥く如きガスタンクの解体をする
発想に乾杯 今井洋一
【作品Ⅱ】
「たこ焼きがようやくまあるく焼けたよ」と
湯気ごと受けし 友の声顕つ 小曾根昌子
【まほろば集】10首
一面の青田を白く切り裂きて一羽の鷺が
飛び去りにけり 反町光子
杜鵑草(ほととぎす)の花の芽食べ終えイガイガの
毛虫丸まり花になりきる 同
久方に皆で健康体操をし確認しつつ
再開喜ぶ 坪井 功
童謡を声張り上げて高らかに歌い上げれば
ほんに同志か 同
【会友】
青白き箱入りトマト日々熟し尾瀬高原の
赤に重なる 井出尭之
秋の野に一群れ立てるコスモスのそれぞれに咲く
花の風あり 大川紀美枝
まっくろな煙に急ぎ窓閉めつしめつ清水トンネルを
北へ行くとき(昭和18年) 板垣志津子
うっすらと雪化粧した浅間山皇帝ダリアのピンクの
向うに 川西富佐子
マネキンは四体を替へれば再利用故障の足を
替へるすべなし 土屋明美
新年の歌会始開かれて「和」を詠みこんだ
歌になごみぬ 中山幸枝
迎え盆の賑やかな蝉ポマードのにおい父の
てんぐるまは絶対 牧野八重子
【題詠】食品 3首
ひとかけの肉もないけどおいしかった母の創った
カレーおじやは 板垣志津子
冷凍品おくる辰年の息子いる母の心と母の
味つめる 大場ヤス子
独り居の食品の中の「鴨汁のカップおそば」よ
裏切るなかれ 﨑田ユミ
スーパーに積まれしレタスの切り口は清里高原の
朝霧の色 佐藤真理子
華やかな香りは部屋に満ちてゆく苺を洗い
お客様待つ 萩原教子
いつの間に刺身のパックに姿消す醤油と山葵
取り忘れたり 茂木惠二
囲われた鶏舎に育つニワトリの歩くためでない
モモ持つ悲しみ 元井弘幸
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC
言葉の発見 堀江良子
〈30首詠〉 小原起久子
〈山下和夫の歌〉 1995年『埴』10月号より
〈15首詠〉 菊池悦子・藤巻みや子・堀江良子
〈作品Ⅰ㋑〉 宮澤 燁・森 たま江
牧口靜江・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・石井恵美子
赤石美穂・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 天田勝元・﨑田ユミ
伊藤由美子・ほか
〈作品Ⅱ〉 小曾根昌子
ONE MORE ROOM 小原起久子
山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より
39【「場」の倒錯・「時」の倒錯】
〈まほろば集〉 反町光子・坪井 功
一首鑑賞 矢島由美子・佐藤香林
〈会友〉井出尭之・大川紀美枝
板垣志津子・ほか
〈題詠〉食品
板垣志津子・大場ヤス子・﨑田ユミ
佐藤真理子・萩原教子・茂木惠二
元井弘幸
玉葉和歌集(抄)25 時緒翔子
短歌の作り方覚書 24
要点となる語の反復 堀江良子
ESSAY 振り返ってみれば 清水静子
『炎の女たち』古代篇(49) 山下和夫著
冬季号作品評
作品Ⅰ評 石川ひろ
15首詠・まほろば集評 宮崎 弘
作品Ⅱ・題詠評 佐藤和子
2023年秋季号30首「秋の記憶」評 藤本朋世
ばうんど
編集後記
表紙絵 山下和夫
会員作品(抄)
ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【30首詠】
激動の大地の果てまで続く空遣(や)る方無しの
八月の空 小原起久子
争うことを忘れて永きわが街のときに流れの
濁ることあり 同
【山下和夫の歌】 1995年『埴』10月号 より
崩れたる鹿の頭骨を囲みたる生死のそとの
かたくりの紅 山下和夫
しぐれ来てまたしぐれ来る頭の上に滑翔の鳶の
皓皓の眼(まみ) 同
【15首詠】
粉薬オブラートに包む細き指従妹を美しと
十歳のわれ 菊池悦子
従兄の弾く「アルハンブラの思い出」は従妹と聞きし
未知の切なさ 同
鉛筆を握るといつも温かい樹であった時の
木の体温 藤巻みや子
泣いてない滲んでるだけ遠い木に小鳥も目覚め
陽もあたるから 同
灼熱の昭和の香る商店街は耳鳴りの
するような静寂 堀江良子
青嵐に繁みの魔物の影ゆらぐ 明日は無きもの
無意味にさがす 同
【作品Ⅰ㋑
勝利とう言葉が人を虜にす大谷翔平 東条英機
宮澤 燁
一月の道を枯れ葉はさまよえり役目の終わりし
われのごとくに 森たま江
右向けば左のことは忘れます 鈍感力は
ますます冴えて 牧口靜江
なにするも気のそぞろなり春真中ぬき取った歯が
疼きだす 江原幸子
葉の落ちて夕日に赤い鳥爪古刹の梵鐘
力まずに衝く 宮崎 弘
中秋の名月の朝ふいに鳴る電話が知らせり
いとこの訃報 佐藤和子
朱夏の窓より射し込む陽光は一本の矢となり
わが部屋を射る 石川ひろ
団らんの消えるものと知らずいし幼きわれ居し
居間重機がたたく 元井弘幸
【作品Ⅰ㋺】
火のごとく泣きいる赤子の天真さ ぎらつく陽射差しも
天真爛漫 相良 峻
じゃがいもの芽を剥ぐ指先うすく切る 老人ホームを
どう切り出すか 石井恵美子
芽吹くべき数多の団栗踏みしだく母木の下の
幾人(いくたり)の足 赤石美穂
起き抜けにコップ一杯の水を飲むコロナ熱に乾く
喉を逆立て 今井五郎
夏休みの子らの声吸いミュージアムの月長石は
静かに輝く 佐藤真理子
【作品Ⅰ㋩
右の手に手提げ下げたる龍の人形話しかければ
返事をしそう 天田勝元
飾られし「光に映える明神池」光と共に
向かいくる波動 﨑田ユミ
誕生日のお花は万年青(おもと)
花言葉は長寿と母性 初めて知りぬ
伊藤由美子
無言館訪ねし日ありて若き日の絵のモデルたちの
歳月長く 大場ヤス子
屋敷祭の近づく中を篠に紙垂(しで)挟みて
捧ぐ神と屋内(やぬち)に 佐藤香林
駐車場はいつのまにやら新築の家に化けおり
新町駅前 清水静子
窓からのあふれる光に安堵する娘の新居を
初めて訪ね 萩原教子
灯を求め居間に張りつきし守宮(やもり)の
手足動かざりけり 茂木惠二
リンゴの皮を剥く如きガスタンクの解体をする
発想に乾杯 今井洋一
【作品Ⅱ】
「たこ焼きがようやくまあるく焼けたよ」と
湯気ごと受けし 友の声顕つ 小曾根昌子
【まほろば集】10首
一面の青田を白く切り裂きて一羽の鷺が
飛び去りにけり 反町光子
杜鵑草(ほととぎす)の花の芽食べ終えイガイガの
毛虫丸まり花になりきる 同
久方に皆で健康体操をし確認しつつ
再開喜ぶ 坪井 功
童謡を声張り上げて高らかに歌い上げれば
ほんに同志か 同
【会友】
青白き箱入りトマト日々熟し尾瀬高原の
赤に重なる 井出尭之
秋の野に一群れ立てるコスモスのそれぞれに咲く
花の風あり 大川紀美枝
まっくろな煙に急ぎ窓閉めつしめつ清水トンネルを
北へ行くとき(昭和18年) 板垣志津子
うっすらと雪化粧した浅間山皇帝ダリアのピンクの
向うに 川西富佐子
マネキンは四体を替へれば再利用故障の足を
替へるすべなし 土屋明美
新年の歌会始開かれて「和」を詠みこんだ
歌になごみぬ 中山幸枝
迎え盆の賑やかな蝉ポマードのにおい父の
てんぐるまは絶対 牧野八重子
【題詠】食品 3首
ひとかけの肉もないけどおいしかった母の創った
カレーおじやは 板垣志津子
冷凍品おくる辰年の息子いる母の心と母の
味つめる 大場ヤス子
独り居の食品の中の「鴨汁のカップおそば」よ
裏切るなかれ 﨑田ユミ
スーパーに積まれしレタスの切り口は清里高原の
朝霧の色 佐藤真理子
華やかな香りは部屋に満ちてゆく苺を洗い
お客様待つ 萩原教子
いつの間に刺身のパックに姿消す醤油と山葵
取り忘れたり 茂木惠二
囲われた鶏舎に育つニワトリの歩くためでない
モモ持つ悲しみ 元井弘幸