2024年春季号 NO.276
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC
かんたん短歌 相良 峻
〈15首詠〉 石川ひろ・佐藤和子
〈山下和夫の歌〉 1996年『埴』4月号より
〈作品Ⅰ㋑〉 小原起久子・牧口靜江
宮崎 弘・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・石井恵美子
赤石美穂・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 天田勝元・伊藤由美子
今井洋一・ほか
一首鑑賞 赤石美穂・石川ひろ
ONE MORE ROOM 小原起久子
山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より
40【対象からのメッセージ】
〈作品Ⅱ〉小曽根昌子
〈会友〉板垣志津子・井出堯之
大川紀美枝・ほか
〈まほろば集〉 茂木惠二・佐藤香林
短歌の作り方覚書 25
素材について 堀江良子
ESSAY 「光る君へ」と「源氏物語」
石井恵美子
一首鑑賞 矢島由美子・佐藤香林
〈題詠〉虫
天田勝元・板垣志津子・清水静子
大場ヤス子・藤巻みや子
一首鑑賞 板垣志津子・佐藤真理子
玉葉和歌集(抄)26 時緒翔子
『炎の女たち』古代篇(50) 山下和夫著
冬季号作品評
作品Ⅰ評 石川ひろ
15首詠・まほろば集評 佐藤真理子
作品Ⅱ・題詠評 菊池悦子
ばうんど
新刊紹介
編集後記
表紙絵 山下和夫
会員作品(抄)
ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【15首詠】
町内の個人情報破棄すれば悲鳴にも似た
シュレッダーの音 石川ひろ
コロナ禍にわれの弱さを隠しいるマスクが顔の
一部となりて 同
初雪の一夜明ければ銀世界除雪車ザリザリ
近づきほっとす 佐藤和子
雪水の凍らぬように砂まかれいし翌朝に
巡回車見し 同
【山下和夫の歌】 1996年『埴』4月号 より
夜爪切りてはならぬと夢に来し亡母の暁の背な
いずこに帰る 山下和夫
刈りたての髪と新しきワイシャツと今日バースデイ
懈怠(けたい)に過ごせ 同
【作品Ⅰ㋑】
平家の赤源氏の白もはろばろし朴葉のセピアが
からりと干反(ひぞ)る 小原紀久子
残り世を消しゆくごとく秒針の刻む音する
雪降る真夜は 牧口靜江
少子化の、それがどうしたさわりなき小さきが跳ねる
ふわふわドーム 宮崎 弘
鈴懸の長い枝先に身は垂れて更けゆく秋と
均衡保つ 堀江良子
最後の葉払い落して大銀杏太き幹突きあげ
冬日受けおり 江原幸子
クリスマスローズうつむいたまま春告げる
灰色のこの国群れて彩れ 元井弘幸
【作品Ⅰ㋺】
手袋をはめ直したとき冬の陽が見せた
手の甲 染み、皺、かさつき 相良 峻
冬の木木渡る小鳥が不意に消え銀色の機影
キラリと光る 石井恵美子
おちこちより地震のアラート人々はスマホを見つつ
元日をゆく 赤石美穂
三センチ背丈の縮み戸棚から土鍋出すとき
踏み台が要る 今井五郎
新じゃがの香に思い出す義母の短歌(うた)
じゃがいもの花のうすむらさきよ
佐藤真理子
【作品Ⅰ㋩
春の畑 メインの通りにある人は通る人毎
手を休めたり 天田勝元
「おはよう」の返事も出来ぬまま今日一日が
重く始まる 伊藤由美子
月面の「SLIM」よ起きよ確かめよ姫はいずこや
若々しきや 今井洋一
通院のわたしに付ききたカラスらし帰りの空に
カアとなき待つ 大場ヤス子
多様性 全てのひとに住み易い社会で言葉は
少し窮屈 菊池悦子
全身を花と苔で飾りたる椿の花は
そこを動かず 清水静子
朝の陽に背高のっぽの影「先立てて」八十代の
大晦日を行く 﨑田ユミ
帰り咲く木瓜に雪平(ゆきひら)ふりかかる
ふわりゆうらり風のリズムに 反町光子
今年こそ百日草を是が非とも聢と咲かせたく
祈って播きおり 坪井 功
ワクチンを打つか打たぬか吹く風は人それぞれと
家族も友も 萩原教子
ひとりしずか絶えたり芽立ちを待つことも
もうないという小さな放心 藤巻みや子
【作品Ⅱ】
めざめたる床の温きに身を置きつつ今朝も思わる
震災の能登 小曾根昌子
【会友】
桜吹雪にこおどりしてゐる園児らの帽子の上に
踊る花びら 板垣志津子
使い捨て文化の定着増え続く百円ショップに
非正規雇用 井出尭之
玻璃ごしに束の間降りくる牡丹雪亡き人からの
かそけき便り 大川紀美枝
春浅き土手の桜の咲くも見ず小動物の亡骸(なきがら)
横たう 川西富佐子
尻尾を切り逃げる蜥蜴の早技は忍者の如く
猫の目かわす 土屋明美
塀越しの隣家の牡丹の大輪のその豪華さに
見とれいる朝 中山幸枝
孫抱きてゆうらりゆらり子守歌ママちゃん今夜は
ゆっくりお食べ 牧野八重子
【まほろば集】10首
元日の地震(ない)に隆起し砂浜が割れてゴツゴツ
見るかげもなし 茂木惠二
友描きし珠洲の三崎の絵手紙にハマナスの花
あかくゆらゆら 同
ガザ地区の飢饉も忘れて余りもの捨てる朝(あした)よ
ためらひもなく 佐藤香林
木蓮の蕾は空に飛び立つか銀ねずとがらせ
朝陽に掲ぐ 同
【題詠】虫 3首
懸命に逃げる毛虫を踏み潰す吾の姿は
阿修羅に似たり 天田勝元
D・D・Tのにほひの満ちた教室に古今集を学びし
六年の春 板垣志津子
真黄色の花粉団子を巻き付けて重くはないか
蜜蜂の昼 清水静子
庭隅のいちごに白き花が咲く虫なめぬよう
一日見ている 大場ヤス子
鳴くことのない虫もいるいつのまにか泣けなくなった
ヒトもいたりする 藤巻みや子
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC
かんたん短歌 相良 峻
〈15首詠〉 石川ひろ・佐藤和子
〈山下和夫の歌〉 1996年『埴』4月号より
〈作品Ⅰ㋑〉 小原起久子・牧口靜江
宮崎 弘・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・石井恵美子
赤石美穂・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 天田勝元・伊藤由美子
今井洋一・ほか
一首鑑賞 赤石美穂・石川ひろ
ONE MORE ROOM 小原起久子
山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より
40【対象からのメッセージ】
〈作品Ⅱ〉小曽根昌子
〈会友〉板垣志津子・井出堯之
大川紀美枝・ほか
〈まほろば集〉 茂木惠二・佐藤香林
短歌の作り方覚書 25
素材について 堀江良子
ESSAY 「光る君へ」と「源氏物語」
石井恵美子
一首鑑賞 矢島由美子・佐藤香林
〈題詠〉虫
天田勝元・板垣志津子・清水静子
大場ヤス子・藤巻みや子
一首鑑賞 板垣志津子・佐藤真理子
玉葉和歌集(抄)26 時緒翔子
『炎の女たち』古代篇(50) 山下和夫著
冬季号作品評
作品Ⅰ評 石川ひろ
15首詠・まほろば集評 佐藤真理子
作品Ⅱ・題詠評 菊池悦子
ばうんど
新刊紹介
編集後記
表紙絵 山下和夫
会員作品(抄)
ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【15首詠】
町内の個人情報破棄すれば悲鳴にも似た
シュレッダーの音 石川ひろ
コロナ禍にわれの弱さを隠しいるマスクが顔の
一部となりて 同
初雪の一夜明ければ銀世界除雪車ザリザリ
近づきほっとす 佐藤和子
雪水の凍らぬように砂まかれいし翌朝に
巡回車見し 同
【山下和夫の歌】 1996年『埴』4月号 より
夜爪切りてはならぬと夢に来し亡母の暁の背な
いずこに帰る 山下和夫
刈りたての髪と新しきワイシャツと今日バースデイ
懈怠(けたい)に過ごせ 同
【作品Ⅰ㋑】
平家の赤源氏の白もはろばろし朴葉のセピアが
からりと干反(ひぞ)る 小原紀久子
残り世を消しゆくごとく秒針の刻む音する
雪降る真夜は 牧口靜江
少子化の、それがどうしたさわりなき小さきが跳ねる
ふわふわドーム 宮崎 弘
鈴懸の長い枝先に身は垂れて更けゆく秋と
均衡保つ 堀江良子
最後の葉払い落して大銀杏太き幹突きあげ
冬日受けおり 江原幸子
クリスマスローズうつむいたまま春告げる
灰色のこの国群れて彩れ 元井弘幸
【作品Ⅰ㋺】
手袋をはめ直したとき冬の陽が見せた
手の甲 染み、皺、かさつき 相良 峻
冬の木木渡る小鳥が不意に消え銀色の機影
キラリと光る 石井恵美子
おちこちより地震のアラート人々はスマホを見つつ
元日をゆく 赤石美穂
三センチ背丈の縮み戸棚から土鍋出すとき
踏み台が要る 今井五郎
新じゃがの香に思い出す義母の短歌(うた)
じゃがいもの花のうすむらさきよ
佐藤真理子
【作品Ⅰ㋩
春の畑 メインの通りにある人は通る人毎
手を休めたり 天田勝元
「おはよう」の返事も出来ぬまま今日一日が
重く始まる 伊藤由美子
月面の「SLIM」よ起きよ確かめよ姫はいずこや
若々しきや 今井洋一
通院のわたしに付ききたカラスらし帰りの空に
カアとなき待つ 大場ヤス子
多様性 全てのひとに住み易い社会で言葉は
少し窮屈 菊池悦子
全身を花と苔で飾りたる椿の花は
そこを動かず 清水静子
朝の陽に背高のっぽの影「先立てて」八十代の
大晦日を行く 﨑田ユミ
帰り咲く木瓜に雪平(ゆきひら)ふりかかる
ふわりゆうらり風のリズムに 反町光子
今年こそ百日草を是が非とも聢と咲かせたく
祈って播きおり 坪井 功
ワクチンを打つか打たぬか吹く風は人それぞれと
家族も友も 萩原教子
ひとりしずか絶えたり芽立ちを待つことも
もうないという小さな放心 藤巻みや子
【作品Ⅱ】
めざめたる床の温きに身を置きつつ今朝も思わる
震災の能登 小曾根昌子
【会友】
桜吹雪にこおどりしてゐる園児らの帽子の上に
踊る花びら 板垣志津子
使い捨て文化の定着増え続く百円ショップに
非正規雇用 井出尭之
玻璃ごしに束の間降りくる牡丹雪亡き人からの
かそけき便り 大川紀美枝
春浅き土手の桜の咲くも見ず小動物の亡骸(なきがら)
横たう 川西富佐子
尻尾を切り逃げる蜥蜴の早技は忍者の如く
猫の目かわす 土屋明美
塀越しの隣家の牡丹の大輪のその豪華さに
見とれいる朝 中山幸枝
孫抱きてゆうらりゆらり子守歌ママちゃん今夜は
ゆっくりお食べ 牧野八重子
【まほろば集】10首
元日の地震(ない)に隆起し砂浜が割れてゴツゴツ
見るかげもなし 茂木惠二
友描きし珠洲の三崎の絵手紙にハマナスの花
あかくゆらゆら 同
ガザ地区の飢饉も忘れて余りもの捨てる朝(あした)よ
ためらひもなく 佐藤香林
木蓮の蕾は空に飛び立つか銀ねずとがらせ
朝陽に掲ぐ 同
【題詠】虫 3首
懸命に逃げる毛虫を踏み潰す吾の姿は
阿修羅に似たり 天田勝元
D・D・Tのにほひの満ちた教室に古今集を学びし
六年の春 板垣志津子
真黄色の花粉団子を巻き付けて重くはないか
蜜蜂の昼 清水静子
庭隅のいちごに白き花が咲く虫なめぬよう
一日見ている 大場ヤス子
鳴くことのない虫もいるいつのまにか泣けなくなった
ヒトもいたりする 藤巻みや子